11月25日、金曜日。朝。いつも通りに子供を保育園に送り、自転車を最寄りの駅の駐輪場に置いて、いつもと同じ時間の電車に乗った。会社の最寄りに到着。いつも通り、改札を出て右に曲がり、商店街を歩いていく。
キョロキョロしてしまう僕。手のひらに汗が滲む。なんだかわからないが、涙ぐんでくる。そのうちにポロッと涙がこぼれてしまい、マスクに染み込んでいった。お昼ご飯に食べるおにぎり、サラダと水を二本、出社してからすぐ飲む野菜ジュースを買うお店に入るも、いつもと同じ買い物をしたら、会社に行くということか、本当か?と自問自答して、そうこうしているうちにお店から飛び出してしまった。こんな不審者のような状況で会社の人に会ってしまってはならないと、商店街ではなく裏道を歩いて、さっき来たばかりの会社の最寄駅へ戻る道を歩いている。駅ビルのベンチで少し休もうとしたが、病院の待ち合いをしている老人たちでごった返していて、座るにも座れない。まだ挙動不審、様子がおかしい僕。出社時間の9:30を過ぎる。このままではいかん、無断欠勤になってしまう、急いでメールを打つ。社長と同僚に。
電車で移動中に体調が悪くなったので引き返しました。お休みさせてください。
お大事に、とすぐに返信が来る。前日に隣の関連会社で陽性者が出たこともあり、コロナやインフルエンザを疑って、その心配をしてくれた社長。そしてすぐに、そうではない可能性があることに気がついたのか、何か情報を聞きつけたのか、心の心配をしてくれた内容のメールもきた。
そういえば24日、挙動不審になる前日。隣の役員が僕を心配してくれて話をしてくれた。メンタル大丈夫か?もしかしたら適応障害じゃないかとか思って、心療内科とか通ってないか?と。適応障害って言葉は聞いたことあったけど、どんな病気か、症状かよくわからなくて、けど、もしかしたらそうかな?と思ってみたものの、調べるのも怖くてその日はやり過ごした。きっとここ最近の僕は様子がおかしくて、心配されていたんだなと少し自覚し始めた。
25日の朝の通勤の時にネットやYouTubeで適応障害のことを少し調べた。仕事で失敗、ミスが重なる。仕事に行くのが怖くなる。理由もなく涙が出る。こんなことが書いてあって、まさに今の自分の状況だとわかった。休むメールを送って、帰りの電車でもまだ挙動不審、何かに怯えている。家に帰ろうと思ったが、奥さんに何て言ったらいいか、こんな弱い人間だとわかったら、なんて言われるだろうかと不安になり、すぐには家に帰れなかった。偉いもんで、お腹は空いてきて、ご飯を食べて、あたりをウロウロして時間を潰していた。会社でミスばかりして迷惑かけてばかりの僕は、誰の役にも立っていないと絶望していた時、ふと献血の案内が目に入り、こんな僕でも役に立つことができるかもと思い、大嫌いな注射を我慢して人生初献血。400ミリ、僕の血液を差し上げてきた。左腕は献血した証の内出血のあと。僕は家に帰って、奥さんに今朝のことを話す決意をした。
帰ったら、奥さんは打ち合わせに出ていていなかった。先にLINEで、実は具合悪くて帰ってきたと伝えたら、心配された。熱は?無理しないでね、と。熱はなくて、精神的にきていたみたいで、会社に行けなかったんだと告白。
帰宅した奥さんはニッコリして、僕の背中をさすってくれた。僕は恥ずかしいけど、会社に行けなかったと伝える途中で泣いてしまった。僕は情けない、弱い人間だ、ごめんね。
時間は19:00近く、保育園に子供たちを迎えに行く時間だ。僕は子供達には元気でいつも通りな僕でいたいから、家から出ないのではなく一緒にお迎えに行くことにした。子供たちはいつも通り元気に、そして時にはワガママに、泣いたり笑ったりしていた。仕事のことから少し離れて、心は落ち着いてきていたように感じた。
帰宅してから奥さんが帰ってくるまでの間、布団に横になっていたが、その時に会社の同僚から心配の電話が。大丈夫?社長もかなり心配してたし、かなりしょんぼりしてたよ、怒ったりする様子はないから、大丈夫だよ。辞めたいとかいうわけではないんでしょ?それならよかったよ。と。社長にも、月曜日は出社します、とメールし、頼りにしてるぞ!とすぐに返信がきた。本社の同僚からも心配のLINEがきた、社長はメール返ってきて、月曜日来るって内容がものすごく嬉しかったみたいだよ、って。
みんなに迷惑と心配をかけているのにこんなにも気にしてくれて、心配をしてくれて、それなのに僕は会社の役に立たず、迷惑と尻拭いばかりさせてしまっていて、不甲斐なく、申し訳なく、なんともいえない気持ちになり、布団で大泣きしてしまった。嗚咽。
週末は子供たち、奥さんの実家のご両親、奥さんの姉家族と一緒に過ごして、これまた仕事のことなんて頭から遠ざけることに成功していたので、少し元気になった。
月曜日。保育園まで子供を送り、また会社の最寄りまで行ったが、この日は改札を右に曲がれず、会社とは逆方向に歩いてしまい、また引き返してきてしまった。火曜日、今朝。保育園には送ったものの、朝から行けない様子だったので、早々に電車で会社に行くことはせずに、休む連絡をした。
僕は、ストレスはかかっても寝てしまえばある程度解消されるようなタイプで、これまでも会社を辞めたい、嫌だと思うことは数多くあったものの、行くことができないという体調になることはなかった。自分は平気だと思っていた。打たれ強くはないものの、メンタルで病むことはないと思っていた。
けど、そんなことはなかった。
奥さんの前で泣いてしまうこと、数回。恥ずかしいが、これが僕だ。奥さんは無理しないで、会社行っても行かなくてもどっちでもいいからね。お家に帰ってきていいんだからね、水くさいことしないでね。と言ってくれている。甘えてしまっているし、怠けてしまっているようにも見えるだろう。普段と同じくらい食欲はあるし、塞ぎ込んではいけない、家にいると奥さんも気を使うだろうと思って、今日は昼前に家を出て、気晴らしをしている。本を読んだり、カフェでボーッとしたり。これがメンタルやられてる人に見えるのだろうか。ハタからみれば、病んでる人には見えないだろう。
明日、社長と会うことになった。お昼でも食べて、気を紛らせようと。気遣ってくれた。会ったら、きっと涙が出てしまうだろう。今、明日の想像をしただけで涙が出そうだもの。
適応障害って、環境のアレルギーと言われているみたい。適応できないという障害ではなくて、その環境にその人が適応できない状況ということで、もうどこに行っても適応できないということではないらしい。
今の会社はいい人たちだらけだ。だけど、僕にとってはアレルギー反応が出てしまう場所なのかもしれない。10年も働いているのに、そんなことになってしまうのかと自分でも驚きなのだが、もしかしたらそうなのかもしれない。
皆さん、心と体、大切に。
コメント